腸内環境を整える方法とは?最新の研究からオススメできる方法を解説

更新:2021年03月15日
この記事の監修者
烏山 司 先生(消化器内科医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター)

消化器内科医として勤務する傍ら、スポーツドクター資格も取得。一般の方からアスリートまで、専門である消化器を中心に内科領域全般の診療を行っている。

約10年前から腸内細菌に関する研究が盛んになり、2013〜2017年の間で、約13万件の腸内細菌に関する論文が発表されました。

腸内環境を改善する食べ物は、ハーブ系のお茶や食物繊維の多い海藻類などを中心にたくさん見つかっています。しかし、どの論文においても〇〇さえべれば大丈夫」のような言い方を避けています。それはこの世に「これを食べるだけで腸内環境が改善する!」という食材が存在しないからです。

では、一体どうすれば腸内環境が改善するのでしょうか?この記事では、最新の研究からおすすめできる腸内環境を改善する方法を紹介していきたいと思います。

「腸内環境を整える」ってどういうこと?

そもそも、腸内環境を整えるとはどういうことなのでしょうか?

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お伝えしたとおり、腸内環境を整える効果のある食材がたくさん報告されていますが、このような食材が腸内環境に与える影響には二つの共通点があります。

  1. 大腸内の善玉菌の数が増える
  2. 腸内細菌の種類が増える

つまり「腸内環境が整う」とは、上記の2つの変化が大腸内で起こることだと言えます。では、どうやったらこのような変化が起こせるのでしょうか。

腸内環境改善方法その1:食事改善

多くの方が「善玉菌は摂取するもの」だと思っていますよね。腸内環境を整えるために、乳酸菌が入ったヨーグルトなどを意識的に摂取している方も多いのではないでしょうか。

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実は、口から食べた善玉菌は、ほとんど私たちの大腸に生着することはなく、そのまま排便されてしまいます。もちろん一部は大腸に住み着くこともありますが、腸内環境は十人十色で、摂取した善玉菌が定着するかしないかは個人差が大きいです。

そのため、善玉菌を増やしたければ、善玉菌そのものを摂取するよりも、既に私たちの大腸にいる善玉菌を増やしたほうが良いのです。

では、大腸内に住む善玉菌を増やす効果がある食品とはなんでしょうか。

おすすめアプローチ①:発酵食品

「発酵食品を摂ろう」と言われると、発酵食品の中に含まれる善玉菌に注目してしまいますよね。もちろん発酵食品に含まれる善玉菌の効果も期待できますが、もっと大事なのは発酵食品に含まれる「食物繊維」です。

発酵食品には、既に細菌によってある程度分解された食物繊維がたっぷり含まれています。例えば漬物や納豆。硬かった野菜が柔らかくなっていますよね。これはある程度消化されている食物繊維なので腸内細菌にとっては食べやすく加工されたものと言えます。つまり、腸内の善玉菌があまり消化に時間をかけずに自分のエサにできて、その結果腸内の善玉菌が増えやすくなるというわけです。

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発酵食品を取る際の注意点としては、特定の発酵食品に偏らないことが重要です。例えばキムチが体に良いと言ってキムチだけを食べ続けるのはおすすめしません。また、腸内環境とは別の観点で、発酵食品の大半が塩分や糖分を多く含むため、取りすぎには注意が必要です。

おすすめアプローチ②:多様性のある食事

腸内環境が悪化すると、肥満・糖尿病・肝臓脂肪増加などのメタボリックシンドローム、腸炎・下痢・便秘などの腸の疾患、またはうつ病まで誘発するという研究結果が出ています。健康状態が悪い人の腸内環境の共通点は、「腸内細菌の種類が少ない」ことです。つまり健康な腸内環境には、たくさんの種類の細菌が暮らしているという特徴があります。

腸内細菌の種類を増やす方法としては、いろいろな種類の食材を食べることが大切です[1]。一つ一つの細菌が利用できる栄養素はさまざまなので、大腸内に多様な細菌が住み着くためには、日々多様な栄養素を腸に届ける必要があります。

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逆に、腸内環境をよくすると言われる食材にこだわって、そればかり食べていると、腸内に供給される栄養分が限定されてしまい、腸内細菌の種類が偏ってしまう可能性があります。つまり、腸内環境が悪化してしまうわけです。

とはいえ、いろいろな種類の食材を自宅で料理して食べるには、時間や心に余裕が必要ですよね。また、外食で多様な食材を食べようとしても、外食で提供されるメニューは肉食が多くなりがちで、食物繊維の不足に陥ってしまいます。そのような方は、善玉菌の好物である「プレバイオティクス」を摂取するのがおすすめです。「プレバイオティクス」とは善玉菌だけを増やす効果のある食材のことで、オリゴ糖などが挙げられます。

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多様なプレバイオティクスをとるというのも腸内細菌の多様性を維持する方法の一つです。

おすすめアプローチ③:食べてはだめなものを知る

反対に善玉菌が嫌うものを食べると善玉菌たちが死んでしまい、悪玉菌が増えるきっかけを与えてしまいます。善玉菌が嫌いなものは「自然界に存在しないもの」です。

わかりやすく言うと、食品に含まれる化学物質です。例えば防腐剤の入った加工食品[2]、人工甘味料[3]、ファストフードなどが挙げられます。これらの食品の中には細菌が分解できない、細菌にとっての「毒」が含まれています。

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腸内環境を改善するために、何を食べるべきで何を避けるべきか?という質問にシンプルに答えると伝統的な日本の食事を食べよう」が答えです。腸内環境を整える特定の食べ物をおすすめするのは難しいですが、何を食べるべきではないのかという質問には明確な答えがあります。食べるべきではないものを知ることが重要です。

おすすめアプローチ④:タバコ、お酒は程々に

御存知の通り、エタノールには消毒効果があります。そして、お酒にはエタノールが含まれています。お酒の大半は小腸で吸収されますが、飲みすぎたお酒は大腸にも到達し、腸内細菌に影響を与えます。その証拠に、アルコール中毒者の腸内細菌は善玉菌が減少していることが分かっています[4]

また、喫煙も腸内環境を悪化させることが報告されています[5]。喫煙すると、老化の原因ともいわれる活性酸素が発生したり、腸粘膜の変化などが起こったりして、腸内環境が悪化してしまいます。つまり、喫煙による体の中の変化が腸内の細菌に影響を及ぼし、悪玉菌を増やしてしまうのです。

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腸内環境改善方法その2:生活習慣の改善

近年の研究報告により、食事以外の要因が腸内環境を左右することもわかってきています。腸は迷走神経を通して脳とつながっているため健康な腸は脳にも良い影響を与えること、逆に不健康な生活習慣が脳に悪影響をあたえ腸内環境を悪くすることもわかっています。

そこで、良い腸内環境を維持するために気を付けたい生活習慣を2つ紹介します。

おすすめアプローチ①:睡眠時間の確保

睡眠不足は肥満、糖尿、高血圧、心臓病など様々な病気と関係していることが報告されています[6]。さらに、睡眠不足は腸内環境にも悪い影響を与えます。例えば、海外渡航による時差ですら腸内環境を悪化させるそうです[7]。また、逆に腸内環境の悪化が不眠症の原因となることも分かっています。

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おすすめアプローチ②:ストレスを溜めない

幸福をもたらすホルモンのひとつに挙げられる「セロトニン」は90%以上が腸で作られており、腸内細菌達がセロトニンの産生に重要な役割を担っています。つまり良い腸内環境の人はストレスに対して打たれ強いといえます。

逆にストレスによる腸内環境の悪化も報告されています[8]。環境の変化によるストレス、温度や圧力などの物理的なストレス、心理的なストレスなどといった違いによって、腸内環境が悪化するパターンが変わるそうです[9]。ストレスにより脳から送り出される様々なホルモンが、腸内細菌に悪影響を与えていることが予想されます。

腸内環境の良し悪しを毎日確認すること

ここまで腸内環境を整えるための具体的な方法を紹介してきました。とは言え、腸内環境を改善するための努力は長期戦。継続することは大変です。モチベーションを維持するための方法を紹介したいと思います。

それは、毎日の大便を流す前に確認することです。確認ではなく敢えて「観察」と言ったほうがよいかもしれません。硬さ、大きさ、臭いに注目してください。色は前日食べたものに影響されるのであまり気にしなくても大丈夫です(血が混じっている場合は要注意ですが)。

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硬くて小さい大便は食物繊維の不足を意味します。臭いのきつい便も要注意です。食べ物以外にもストレスなどが原因の可能性もあります。毎日決まった時間に排便できているかどうかも重要です。脳と腸が連動しているように、腸の働きは体内時計に従っています。

簡単ですが、腸内環境改善ための努力の成果が目に見えて確認できる方法です。ぜひ習慣化してください。

腸内環境を整えるためには食事と生活習慣を長期的に見直そう

腸内環境を整えるためには特定の食材にこだわらずに、食物繊維(特に発酵食品)を摂ること、そして食事の多様性を維持することを心がけてください。短期的な効果を期待せずに食生活の長期的な改善に取り組むことが重要です。たばことお酒は控えてくださいね。

そして、食生活だけでなく生活習慣そのものが腸内環境に影響を与えることを自覚し、睡眠時間の確保、ストレスを溜めすぎないことに努めましょう。長く続けるコツは毎日の便を観察し自分の腸内環境の状態をある程度把握することです。

参考文献

  1. Heiman, M.L.; Greenway, F.L. A healthy gastrointestinal microbiome is dependent on dietary diversity. Mol Metab 2016, 5, 317-320, doi:10.1016/j.molmet.2016.02.005.
  2. Miclotte, L.; Van de Wiele, T. Food processing, gut microbiota and the globesity problem. Crit Rev Food Sci Nutr 2020, 60, 1769-1782, doi:10.1080/10408398.2019.1596878.
  3. Rodriguez-Palacios, A.; Harding, A.; Menghini, P.; Himmelman, C.; Retuerto, M.; Nickerson, K.P.; Lam, M.; Croniger, C.M.; McLean, M.H.; Durum, S.K., et al. The Artificial Sweetener Splenda Promotes Gut Proteobacteria, Dysbiosis, and Myeloperoxidase Reactivity in Crohn's Disease-Like Ileitis. Inflamm Bowel Dis 2018, 24, 1005-1020, doi:10.1093/ibd/izy060.
  4. Bajaj, J.S. Alcohol, liver disease and the gut microbiota. Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2019, 16, 235-246, doi:10.1038/s41575-018-0099-1.
  5. Savin, Z.; Kivity, S.; Yonath, H.; Yehuda, S. Smoking and the intestinal microbiome. Arch Microbiol 2018, 200, 677-684, doi:10.1007/s00203-018-1506-2.
  6. Itani, O.; Jike, M.; Watanabe, N.; Kaneita, Y. Short sleep duration and health outcomes: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Sleep Med 2017, 32, 246-256, doi:10.1016/j.sleep.2016.08.006.
  7. Matenchuk, B.A.; Mandhane, P.J.; Kozyrskyj, A.L. Sleep, circadian rhythm, and gut microbiota. Sleep Med Rev 2020, 53, 101340, doi:10.1016/j.smrv.2020.101340.
  8. Molina-Torres, G.; Rodriguez-Arrastia, M.; Roman, P.; Sanchez-Labraca, N.; Cardona, D. Stress and the gut microbiota-brain axis. Behav Pharmacol 2019, 30, 187-200, doi:10.1097/FBP.0000000000000478.
  9. Karl, J.P.; Hatch, A.M.; Arcidiacono, S.M.; Pearce, S.C.; Pantoja-Feliciano, I.G.; Doherty, L.A.; Soares, J.W. Effects of Psychological, Environmental and Physical Stressors on the Gut Microbiota. Front Microbiol 2018, 9, 2013, doi:10.3389/fmicb.2018.02013.
この記事の監修者
烏山 司 先生(消化器内科医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター)

消化器内科医として勤務する傍ら、スポーツドクター資格も取得。一般の方からアスリートまで、専門である消化器を中心に内科領域全般の診療を行っている。

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